静岡戦国奇譚

中部伝承静岡市
静岡市一眼の霊鬼

400年以上も昔、蒲原に城がありました。その城の城主は北条新三郎(ほうじょうしんざぶろう)といい、蒲原も平和な毎日でした。しかし、平和な毎日もつかの間、武田信玄が城を攻めてきました。その攻城がうまかったことといったらありませんでした。新三郎もあわてふためいて、もう、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり……。そしてこの城は、信玄により火の城となりました。
彼は、火の城となった城を見かねて、少しはなれた草原に待機しようと走り去りました。しかし、戦いのため、疲労が重なり、身体がいうことをきかず、よろよろよろけて草原に入りました。その時、ピューンと矢がとんできました。矢は彼の背中にささり、それが最期となったのです。そして彼の霊は、ゆくあてもなくさまよっていました。

霊鬼が現れてから1週間もたたないうちに、何十人もの里人が寝こんでしまったり、腰を悪くする人でいっぱいになりました。そこで里人たちは、ある坊様に霊鬼が出ないように頼みました。
「ほほう、その方たちは、あの霊魂に困っているのだな。ようし、私の念仏で、あの霊鬼を退治してやろう。」里人たちは、涙を流してよろこびました。
時は、どんどん過ぎていきました。それと共に念仏もだんだん強まっていきました。さすがの霊鬼も酔ってしまい、最後には消えてしまいました。これで、やっと蒲原にも平和の花が咲き、里人は非常によろこびました。お偉い坊様は神様のようにたてまつられ、いつまでもいつまでも末永く幸せに暮らしたとのことであります。

 

出典/「こどもたちのほりおこした静岡県の民話と伝説」静岡県教育委員会