静岡戦国奇譚

浜松市西部伝承
浜松市樹上の落武者

三ヶ日町の元平山(ひらやま)小学校あとには「すいせん様」という小さなほこらがあります。
それは、戦国時代のある夏の日のことでした。三州(三河)あたりで戦いがあったのでしょう。中山峠を越して逃げてくる、傷ついた一人の落武者がありました。
落武者は、とても大きなお屋敷にたどり着きました。次郎左衛門という長者の屋敷です。落武者は、長者に「お願い申す。」とたのんで、広い庭にあった椋(むく)の木に登らせてもらいました。
しばらくして追手の武者たちがやってきました。追手は、落武者がいなくなったので、「だめだ死んだのだろう。」といって帰りかけました。
その時、次郎左衛門は欲に目がくらんで、「武者はあそこの椋の木に……。」といってしまいました。
それから後、次郎左衛門の一族には病人が絶えませんでした。占う人に見てもらうと、「…やしきの中で殺された落武者が、あの世へいけず迷っている。」というのです。さっそくほこらを建てて、その霊をまつりました。すると病人は出なくなったということです。
その後、この家は滅び、広い屋敷は開墾されましたが、ほこらだけは今も残って、その付近の人たちがまつっているそうです。

出典/「こどもたちのほりおこした静岡県の民話と伝説 第2集」静岡県教育委員会